オーセンティックリーダーシップ研修は、リーダーが自分の価値観や目的に根ざした「軸」を持ち、一貫した判断と言動で周囲を導けるようになることを目指す研修です。「オーセンティック(authentic)」は「本物の」「真正の」という意味で、誰かの理想像をまねるのではなく、自分らしさを土台にしたリーダーシップを育てます。
答えのない課題が増えるなかで、リーダーには状況に流されない判断軸と、部下から信頼される一貫性が求められています。自分の強みや弱みを理解したうえで率直に関わるリーダーは、部下が安心して意見を出せるチームをつくる力にもなります。
本記事では、オーセンティックリーダーシップ研修の基本から、学べる内容、向いている企業や受講者、期待できる効果、費用相場、導入時の注意点までを整理して解説します。
「オーセンティックリーダーシップ研修」と検索して表示された上位10サイトの中から、公式サイトでオーセンティックリーダーシップに関する研修を提供していることが確認できた会社を掲載しています。(2026年9月29日時点)
本来の自己に根ざした、強くてしなやかな軸をつくることをコンセプトにした研修です。ハーバード大学教育大学院のロバート・キーガン教授が提唱する「成人発達理論」をベースに、同社が独自に開発したセッションで構成されています。
成人発達理論では、大人の知性を「環境順応型」「自己主導型」「自己変容型」の3段階で捉えます。言われたことしかできない、事なかれ主義に陥りやすいといった課題があれば、「環境順応型」から「自己主導型」への移行がテーマになります。リーダーとしての強さはあるものの独善的な判断に陥りやすい場合は、「自己主導型」から「自己変容型」への移行をテーマに、受講者の状態に合わせてプログラムを展開します。
対象は社長、役員、シニアマネジメント、管理職、チームリーダーと幅広く、適正人数は12名までの少人数制です。所要期間は約半年で、2日間のショートバージョンや、通い形式での実施にも対応しています。
受講者が自分の「本当にやりたいこと」を軸として持ち、伝えるべきことをしっかり伝える姿勢を確立することで、部下に伝わる言葉で語り、自ら問題解決の施策を提案して動けるリーダーへの変化を目指します。管理職になってもプレイヤー意識が抜けない、部下から「軸がない」「ぶれている」と見られているといった課題を持つ企業に適した研修です。
新任・若手管理職から中堅リーダー、経営層、次世代リーダー候補まで、階層に合わせてカスタマイズできる研修です。自らの価値観に根ざした判断軸を持ち、正解のない状況でもチームを導けるリーダーの育成を目的としています。標準の1日版では、リーダーシップの考え方と土台となる「あり方」、自己認識から始め、価値観の発掘、ビジョンやバリューの言語化、実践プランの策定までを段階的に進めます。対面、オンライン、ハイブリッドのいずれにも対応しており、自分の言葉で「なぜ」を語れるリーダーを育てたい企業に向いています。
次世代リーダーや中間管理職、経営陣を対象に、自己理解を深めながら自分らしいリーダーシップを開発する1日研修です。性格タイプ診断のMBTI®を用いて自分の特性を客観的に把握するとともに、レジリエンスやマインドフルネスについても学びます。グループワークを通じて他者との違いを理解し、研修の最後には「リーダーの哲学」として自分の行動指針をまとめて発表します。
階層別研修やグローバル人材育成を手がけるアルーは、オーセンティックリーダーシップの考え方を取り入れ、対話を中心に自分の価値観と向き合う管理職研修を提供しています。自分が目指す方向を探るワークや360度フィードバック、1on1の運用などを組み合わせ、導入から定着までを段階的に設計する点が特徴です。部長・部長候補者を対象とした長期プログラムの実績もあり、研修を一過性で終わらせず、職場での実践までつなげたい企業に向いています。
オーセンティックリーダーシップとは、自分の価値観や信念、目的に忠実でありながら、それを周囲に開示し、一貫した言動で人を導くリーダーシップです。提唱者として知られるのは、医療機器メーカー・メドトロニックの元CEOであるビル・ジョージ氏です。2003年の著書『Authentic Leadership』(邦訳『ミッション・リーダーシップ』)で提唱し、広く知られるようになりました。
ジョージ氏は、オーセンティックなリーダーの特性として、自らの目的を理解していること、確かな価値観に基づいて行動すること、心を込めて導くこと、人との関係を築くこと、自らを律することを挙げています。
その後、学術研究でも測定の枠組みが整理されました。2008年にはワルンバ(Walumbwa)氏らが、「自己認識」「関係の透明性」「内面化された道徳観」「バランスのとれた情報処理」という4つの要素で構成される尺度を発表しています。
事業環境の変化が激しく、過去の成功パターンが通用しにくい状況では、リーダー自身も答えを持っていない場面が増えます。こうした場面で、肩書きや権限だけに頼るリーダーシップでは、部下の納得や主体的な行動を引き出しにくくなります。
また、働く人の価値観が多様になるなかで、「このリーダーと一緒に働きたい」と思えるかどうかは、言葉と行動の一貫性や誠実さに左右されます。自分らしさを土台にしたリーダーシップは、変化の中でもぶれない軸と部下からの信頼を両立させる考え方として、管理職や次世代リーダーの育成に取り入れられています。
一般的なリーダーシップ研修は、目標設定や動機づけ、指示の出し方など、リーダーとしての行動やスキルを身につけることが中心です。
一方でオーセンティックリーダーシップ研修は、スキルの前提となる「自分は何を大切にし、何のためにチームを率いるのか」という内面の軸づくりから始めます。スキルを学んでも行動が続かない、状況によって言うことが変わってしまうといった課題に対して、行動の土台から見直す点が異なります。
リーダーシップ開発の全体像や、階層ごとの研修の進め方については、リーダーシップ開発研修のページもあわせてご覧ください。
研修の出発点は、自分自身を深く知ることです。これまでの経験や大切にしてきたこと、心が動いた場面を振り返り、自分の価値観や本当に実現したいことを言葉にしていきます。
自分の軸が言語化されると、迷ったときに立ち返る判断基準ができます。状況に応じて手段は柔軟に変えても、目指す方向はぶれないリーダーシップの土台になります。
オーセンティックなリーダーは、完璧な姿を演じるのではなく、自分の考えや迷い、苦手なことも率直に伝えます。
研修では、360度フィードバックや診断ツールで自分が周囲からどう見えているかを確かめ、自己開示を通じて部下との信頼関係を築く方法を学びます。リーダーが率直であるほど、部下も本音を話しやすくなります。
自分の軸を持つことは、自分の考えに固執することとは違います。
オーセンティックリーダーシップでは、自分と異なる意見や不都合な情報にも耳を傾け、偏りなく検討したうえで判断することが重視されます。研修では、自分の思い込みや判断の癖に気づき、多様な視点を意思決定に取り入れる姿勢を養います。
管理職になった後も、自分で成果を出すことに意識が向き、チームを率いる役割に切り替えられない人は少なくありません。
「自分は何のためにチームを率いるのか」を問い直すことは、プレイヤーからリーダーへの意識の切り替えを促すきっかけになります。
上からの方針に合わせて発言が変わる、昨日と今日で言うことが違うと部下に受け止められているリーダーは、信頼を得にくくなります。
自分の価値観と組織の方針をすり合わせ、自分の言葉で方針を語れるようになることで、部下にとって分かりやすく、ついていきやすいリーダーへと変わっていきます。
経営に近い立場になるほど、正解のない判断を自分の責任で下す場面が増えます。
次世代リーダーや経営幹部候補にとって、自分の信念と組織の目指す方向を結びつけておくことは、難しい局面でも覚悟を持って判断する力につながります。選抜型の育成プログラムの中核に取り入れる企業もあります。
自分の軸が明確になると、状況が変わっても判断の理由を説明できるようになります。
言っていることとやっていることが一致しているリーダーは、部下にとって行動の基準が分かりやすく、チーム全体の判断もそろっていきます。
リーダーが自分の考えや迷いを率直に伝えると、部下は「このリーダーには本音を話してもよい」と感じるようになります。
信頼関係が深まることで、報告や相談、反対意見が出やすくなり、問題の早期発見や改善にもつながります。
リーダーが自分の軸を持ち、それを語れるようになると、部下にも「自分は何を大切に働くのか」を考える機会が生まれます。
リーダー一人の変化が周囲の主体性を引き出すきっかけになり、指示を待つのではなく、自ら考えて動く組織の土台づくりにつながります。
国内金融企業の事例です。同社では、支店長向けのコンプライアンスや専門知識の研修は充実していたものの、課長・部長など管理職層への体系的な研修は十分とはいえず、次世代経営陣の育成も形式的になりつつありました。ビジネスモデルの変革を進めるなかで、リーダー層が本質的に変わる取り組みが必要だと考え、半日のトライアルを経て、次の執行役員を目指す10人を対象にリーダーシップ開発プログラムを導入しています。
プログラムでは、自己理解を起点に、自分の強みややりたいこと、会社で働く意義を明確にしていきました。当初は半信半疑の雰囲気もありましたが、回を重ねるごとに発言が増え、受講者同士の連帯感が高まっていったといいます。研修後は、年上の部下との関係が改善した受講者が出てきたほか、学びが共通言語となって部署同士が直接つながり、連携が深まるといった変化が生まれています。
国内製薬企業では、新任管理職向けに「視座・俯瞰力の向上」をテーマとした研修を実施していましたが、成果が見えにくく、受講者からも身についた実感がないという声が上がっていました。そこで、会社としての目的である「一つ上の立場で考えられるようにする」ことを、「自分の軸を確立するところから始める」と整理し直したプログラムを導入しています。
プログラムは、360度フィードバック、合宿、個別コーチング、上長との事前・事後面談で構成されました。受講者は合宿で自分らしい軸を見つけ、最終的には自分の軸に基づく企画を立案・実施しています。受講者一人ひとりの変化をレーダーチャートや評価報告書で可視化したことで、上長からも何が起きたのかがよく分かったと評価されています。
大手企業グループのD社では、グループ各社の部長・部長候補者約20名を対象に、約6か月のうち計12日間の次世代経営者育成プログラムを実施しました。コンセプトは「インサイドアウトのリーダーシップ」で、自分の内面にある動機から出発してリーダーシップを育てることを重視しています。
プログラムでは、創業者のストーリーや自社のDNAを掘り下げたうえで、講師との複数回の1on1で、ビジョンと内発的動機のつながりを問い続けました。上司からの差し戻しなど、周囲にもまれる経験も組み込んだ結果、受講者のビジョンが研ぎ澄まされ、自らの想いを自社で形にしていこうとする意識が育っています。
オーセンティックリーダーシップ研修は、受講者の内省や対話を重視するため、少人数で実施する企業向けの研修が中心です。多くの場合、内容や人数に応じた個別見積もりとなっています。
料金を公開している例としては、アースシップ・コンサルティングの「オーセンティック・リーダーシップ研修」が講師料300,000円(税抜)/1日(7時間)です。別途、MBTI®の質問紙が1人2,200円(税抜)、テキストが1人2,400円(税抜)かかります(推奨受講者数は約20名)。(2026年9月時点)
ザ・アカデミージャパンやオーセンティックワークスの研修は、実施時間や人数、カスタマイズの内容に応じた見積もりです。オーセンティックワークスの研修は約半年の長期プログラムを基本とし、2日間のショートバージョンにも対応しています。
費用は、実施日数と期間によって大きく変わります。1日で自己理解から行動計画づくりまで行う研修と、半年ほどかけて合宿や個別コーチングを組み合わせるプログラムでは、講師やコーチの関与の度合いが異なるためです。
また、360度フィードバックや性格診断などのアセスメントを取り入れる場合は、受講者1人あたりの診断費用が追加されます。上長面談や研修後のフォローアップまで設計に含めると研修単体より費用は大きくなりますが、職場での行動の変化にはつながりやすくなります。費用の考え方は、組織改革コンサルの費用相場のページでも詳しく紹介しています。
オーセンティックリーダーシップ研修には、1日で自己理解から行動計画づくりまでを行う短期型と、数か月から半年ほどかけて内省と実践を繰り返す長期型があります。
短期型は、考え方を知り、自分の価値観を見つめ直すきっかけをつくるのに向いています。一方で、リーダーとしての行動を職場で変え、定着させたい場合は、合宿やコーチング、実践と振り返りを組み合わせた長期型が適しています。
研修を選ぶ際は、自社のリーダーが抱えている課題と研修のアプローチが合っているかを確認しましょう。
自己理解を深めたいのか、部下との信頼関係を改善したいのか、次世代経営者としての覚悟を育てたいのかによって、適した内容は変わります。診断ツールを使うのか、対話や体験型のワークを中心にするのかといった進め方の違いも、受講者の特性に合わせて見極めることが大切です。
導入前には、対象者の階層と人数、実施期間、事前課題や診断の有無、研修後のフォロー体制を確認しておきます。
内省を深める研修は、少人数であるほど一人ひとりに向き合う時間を確保できます。また、受講者の上司に研修の目的を共有し、研修の前後に面談の機会を設けると、学びが職場で生かされやすくなります。
オーセンティックリーダーシップは、自分の好きなように振る舞ってよいという意味ではありません。
自分の価値観に忠実であることと、組織の目的や周囲への責任を果たすことを両立させてこそ、周囲から信頼されるリーダーシップになります。研修の冒頭でこの前提を共有しておくことが大切です。
自分の価値観や弱さに向き合う研修では、受講者が安心して本音を話せる場であることが前提になります。
研修の内容が人事評価に直結すると受け止められると、受講者は本音を出しにくくなります。研修で話した内容の扱いを明確にし、評価の場とは切り離して運営することが望ましいでしょう。
研修で自分の軸を見つけても、職場で実践する機会がなければ変化は続きません。
受講者の上司が研修の目的を理解し、研修後の実践を後押しできるよう、事前・事後の面談や報告の場を設計に組み込むことが、成果を職場に定着させるポイントです。
研修を検討する際は、まず自社が今どのようなリーダーを必要としているのかを整理しましょう。
変化の中でもぶれない判断軸を持つリーダーなのか、部下の本音を引き出せるリーダーなのかによって、研修で重視すべき内容が変わります。
内省や対話を中心とする研修は、講師の進め方と受講者の相性が成果を左右します。
いきなり長期プログラムを導入するのではなく、半日や1日のトライアルで受講者の反応を確かめてから本格導入を判断する方法もあります。
リーダーシップの変化は、研修の場だけで完結するものではありません。
研修後のコーチングや振り返りの場、上司との対話など、職場での実践を継続的に支える仕組みまで含めて検討することで、研修の効果を組織に広げやすくなります。
組織変革に向けた研修は、対象者や課題によって選ぶべき内容が変わります。
管理職育成、次世代リーダー育成、理念浸透、部門間連携、1on1の定着など、目的に合った研修を選ぶことが重要です。
研修会社を比較しながら、自社の課題に合う支援先を探したい方は、組織変革研修の種類やおすすめの研修会社をまとめたページをご覧ください。