「会議で意見を聞いても、『特にありません』としか返ってこない」「決まったことに誰も反対しなかったのに、会議後の雑談では違う意見が出ている」——人事担当者からは、こうした声が聞かれることがあります。本記事では、会議で本音が出ない状態がどのようなものかを整理したうえで、その原因と、率直な意見が出る会議にするための具体策を解説します。
会議で発言がまったくないわけではなく、進捗報告や事務的な確認事項は問題なく共有されます。一方で、懸念点やリスク、反対意見といった、伝えるのに勇気がいる内容については発言が出にくく、当たり障りのない受け答えで会議が進んでいくことがあります。
会議の場では誰も異議を唱えなかった決定事項について、会議が終わった後の雑談や、社内チャットの個別のやり取りでは異なる意見が語られることがあります。公式な場と非公式な場で、伝えられる内容に差が生じている状態です。
会議では合意されたはずの内容であっても、実行段階になると着手が遅れたり、当初の想定どおりに進まなかったりすることがあります。会議の場で懸念が共有されないまま決定が進むと、実行する側の納得感が伴わず、後になって動きが鈍くなる原因になります。
発言した内容が人事評価に影響するのではないか、上司や同僚との関係を悪くするのではないかという懸念があると、社員は無難な発言を選びやすくなります。過去に率直な意見を伝えたことで、指摘した本人が対応を任される、あるいは評価者から良く思われなかったという経験があると、次からは発言を控える判断につながります。
会議の中で、役職者や発言力のある人が早い段階で意見を述べると、その後に続く参加者は「これと違う意見は言いにくい」と感じやすくなります。結果として、最初に出た意見に同調する発言が続き、異なる視点が共有されないまま会議が進みます。
過去に会議で意見を伝えても、その後の検討状況が共有されなかったり、結論に反映されなかったりした経験が重なると、「発言しても変わらない」という受け止め方が広がります。この受け止め方が定着すると、社員は発言する労力に見合う結果を期待できなくなり、意見を伝えること自体を控えるようになります。
会議のアジェンダが進捗報告や決定事項の伝達で埋まっており、参加者が懸念や意見を伝える時間が確保されていない場合、本音を話す機会自体が存在しないことになります。時間内に発言できなかった内容は、会議の外で個別に共有されるか、共有されないまま残ることになります。
会議で本音が出ない背景には、心理的安全性の不足が関係していることもあります。ただし、心理的安全性を「発言を優しく受け止めること」と捉えるだけでは不十分な場合があります。評価制度や会議の設計を見直さないまま「発言しやすい雰囲気づくり」だけを進めても、状態が変わらないことがある点については、以下の記事で詳しく解説しています。
会議で共有されなかったリスクや懸念は、なくなるわけではありません。実行段階に入ってから問題として表面化し、対応にあらためて時間を割くことになります。
本音が扱われない状態が続くと、発言しても状況が変わらないという受け止め方が組織内に広がります。これにより、会議で発言する社員自体が減り、報告と確認だけで完結する会議が定着していきます。
現場で気づいている問題が会議で共有されないと、経営層や管理職が課題を把握するタイミングが遅れます。問題が大きくなってから把握することになり、対応の選択肢が限られた状態で判断せざるを得なくなることがあります。
会議で出た意見について、検討した結果や採用しなかった理由を、発言者本人および参加者に共有します。発言が結論にどう影響したかが見える状態にすることで、発言することの意味を感じられるようになります。
役職者や発言力のある人の意見を後に回し、経験の浅い参加者や普段発言の少ない参加者から先に意見を求める進行にすることで、特定の意見に場が引っ張られる状態を避けやすくなります。
会議前に匿名のアンケートやツールを使って意見を集め、会議ではその内容をもとに議論する進め方も一つの方法です。発言者が特定されない形にすることで、対人関係への影響を気にせず意見を出しやすくなります。
一つの会議の中で報告と意見交換を明確に区切り、それぞれに時間を確保します。報告に時間の大半を使ってしまうと、意見交換の時間が削られやすくなるため、あらかじめアジェンダの中で時間配分を決めておくことが有効です。
会議の進行方法は、管理職の経験や個人のやり方に委ねられていることが多く、組織として統一された基準がない場合があります。人事部門が、発言を引き出す進行方法や、意見への向き合い方について管理職向けの研修や助言を行うことで、特定の管理職の力量に依存せず、会議の質を組織全体で底上げすることができます。
会議の進行方法を見直しても本音が出にくい場合、背景に評価制度や部門間の関係性など、会議の運営方法だけでは変えられない要因が存在することがあります。日頃の会議とは別に、まとまった時間を確保して本音を扱う「本音合宿」という手法を取り入れている企業もあります。合宿という形式や進め方の詳細については、以下の記事をご覧ください。
評価制度や組織構造まで踏み込んだ見直しが必要な場合は、組織開発を専門とするコンサルティング会社を活用することも選択肢の一つです。会議での対話設計に重点を置く会社や、評価制度・人事制度の見直しに重点を置く会社など、アプローチの異なる複数の会社があるため、自社の課題がどちらに近いかを見極めたうえで検討することが重要です。